一つの国の経済力を測る指標としては、多くの場合、GDP(国内総生産)が用いられます。GDPは一定期間、多くの場合は1年間に国内で生み出された付加価値の総額を表しています。「付加価値」という語が少し判り難いですが、これを企業に例えて少し判り易く表現すると、企業が一年間の事業で従業員と役員に支払った給与の総額と残った利益の合計額に相当すると言えます。
そこで、先ず、日本のGDPを確認します。図表1-1は、1955年(昭和30年)から2021年(令和3年)までのGDP(名目)を示しています。日本の経済は1970年頃から始まった高度経済成長期に大きく伸びました。そして、1990年頃に生じた「バブル崩壊」を経て、経済が成長しない時代に入りました。そこからは、経済が成長しない「失われた10年」、「失われた20年」と称される期間を経て現在に至っています。近年は「アベノミクス」と称される政府の経済政策で一定の伸びを示していますが、その伸び率は決して大きなものではないことが判ります。
図表1-1 日本のGDP(名目)の長期推移
1955〜1969年は内閣府資料 https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je08/08b09010.html より、
1970年以降は国連データ https://unstats.un.org/unsd/snaama/Basic より作成
日本経済が大きく成長していた1979年には、エズラ・ヴォ―ゲル氏(当時はハーバード大教授、2020年没)による「Japan as No.1」が発刊され、ベストセラーとなりました。この著書では、当時の日本の経済成長力が高く評価されました。また、この経済成長力を支えた日本の様々な制度も、高く評価されました。しかしながら、日本経済が停滞している2008年のダボス会議(世界経済フォーラム主催)では、「Japan, A Forgotten Power?」(日本は忘れられた大国か?)が会議のテーマの一つになっています。いつの間にか、日本の経済はそのように評価されるようになってしまったのです。
先ほどのGDP(名目)の推移に、いくつかのコメントを付記したものが図表Ⅰ-2です。1964年(昭和39年)の第1回東京オリンピック開催や東海道新幹線の東京・新大阪間の開通、1970年の大阪万博の開催、その後の大きな経済成長、それを経ての日米貿易摩擦、そして、不動産の高騰を伴うバブル景気に沸いた後、1990年にバブルが崩壊して現在に至っています。
図表1-2 日本のGDP(名目)の長期推移(コメント付き)
これで、日本の経済力を表すGDPの長期的な推移と、その背景が判って頂けるのではないでしょうか。何よりも知って頂きたいのは、日本の経済はバブル崩壊後の約30年間という長期に渡って停滞しているという点です。これが現在の最大の課題であると言えます。
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