次に、一人当りGDPを確認します。この一人当りGDPは、生活の豊かさを表す代表的な指標の一つです。下のグラフ(図表1-5)はGDP総額の上位15ヵ国の2015年、2020年、2025年の一人当りGDPを示しています(2020年の一部と2025年は推計値です)。 

ここでは、為替換算に「購買力平価(PPP」という方法を採用しています。このPPPは、ある国である価格で買える商品が他の国ではいくらで買えるかを示す交換レートです。生活実態に沿った交換レートと言われるものです。

図表1-5 一人当りのGDP

IMFのデータベース https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April より作成

この図表1を見ると、日本はGDP上位の国々の中では第8位に位置しています。GPD総額では世界第3位でしたが、一人当りGDPではこのような位置づけです。G7 の国々の中では第6位、また、お隣の韓国にも抜かれています。米国は日本の約1.5倍、ドイツは約1.3倍です。これが生活の豊かさの実態を表す指標なのです。これを見ると、日本は、いわゆる先進国の中で、決して豊かな生活を営んでいる国とは言い難いレベルになっていると見ることができます。

図表1-6 一人当りGDPの各国比較    
PPP換算/上位国2021年)      

ここまで、G7を始めとする経済規模の大きな国のGDPや一人当りGDPを見てきました。一方、IMF加盟の中で先進国(Advanced Economy)と言われる全ての国(40か国)の2021年の一人当りGDPを網羅すると、右図(図表16のグラフになります。

 

このグラフでは、日本は全40か国中の35位です。黄色の棒グラフはG7諸国で、この中では日本は最下位です。アジア諸国のマカオ、シンガポール、香港、台湾、韓国との比較でも最下位です。このことから、私たちは経済的に豊かな暮らしをしていると思われるかもしれませんが、さらに豊かな暮らしをしている国が沢山あるのです。むしろ、日本の経済的な豊かさは、先進国の中では下位に位置していることが判ります。

この生活の豊かさの指標を、別の視点から見てみます。図表1のグラフは、OECD加盟の主要国の平均賃金(年額)の10年間の推移です。ここで各国の賃金は2016年を基準とする実質呻吟で、それをPPPで換算してあります。

これを見ると、先ず日本の賃金の低いことが読み取れます。比較対象とした先進国(13か国)の中で、2021年の平均賃金は最下位です。最上位のスイス、米国は日本の1.5倍以上となっています。また、韓国は2014年までは日本より低い平均賃金でしたが、2015年以降は日本を抜き去り、また、2016年にはイタリアを抜き去っています。韓国の経済成長は、この面からも読み取ることができます。それに比べて経済が成長していない日本の状況は、この平均賃金にも表れています。

図表17 OECD主要国の平均賃金の推移

OECDのデータベース https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm#indicator-chart より作成

 世界の経済成長から取り残されると、一人当りGDPや平均賃金といった生活の豊かさを示す指標が、このようになってしまうのだと思われます。

 この平均賃金についても、OECD加盟の先進諸国との比較をしてみます。右図(図表18)のグラフは、OECD加盟国の2021年の平均賃金(年額)です。

赤色の棒グラフが日本を、そして、黄色のグラフが日本以外のG7諸国を表しています。このグラフを見ると、日本は全33か国中の24位という位置づけです。もちろん、G7 諸国の中では最下位です。また、OECD平均からも、大きく見劣っています。

 何よりも、このグラフを見ると日本より平均賃金が高い、言い換えれば、日本より豊かな暮らしをしていると思われる国々が沢山あることです。ヨーロッパの経済規模の小さい国々が、高い平均賃金を得ていることに、驚かれたと思います。これが実態です。 

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