2.人口力(爆発的増加から労働力不足へ)

 次に人口の状態を確認します。『人口は、「力」として認識され続けそうだ。政治力、経済力、財力などと同じように、人口力という言い方があっても、おかしくないかもしれない。』と大和証券の資料に書かれていました。その意味で、人口の状態は、経済を含めて、社会の様々な活動に大きな影響を及ぼすものです。

 図表11920年(大正9年)から将来の2050年までの総人口の推移を表しています。ここで、2020年(令和2年)以降は推計値です。

図表1-9 日本の総人口の推移

政府統計総合窓口 e-Statを利用して作成

日本の総人口は、第二次世界大戦終了時の1945年(昭和20年)には約7,214万人でした。そこから人口増加が始まり、1970年(昭和45年)には1億人を突破しました。そして、2010年(平成22年)にピークを迎えました。その時の人口は、1億2805万人です。そこから人口減少が始まりました。その10年後の2020年(令和2年)9月時点では12328万人です。10年間で、約480万人の減少です。この状態が続くと、約30年先の2050年には8,800万人になると推計されています。これは、ピーク時の人口の約2/3に相当します。それでも、当面の間、総人口の減少はそんなに大きなものではないことも判ります。ただ、その背後で、深刻な少子高齢化が進行しているという大きな課題を抱えていることは良く知られています。

 

 この状況を、年齢3区分の人口動態で再確認します。年齢3区分とは、人口を「年少人口(0~14歳)」、「生産年齢人口(1564歳)」、「老年人口(65歳以上)」の3つの区分に分ける考え方です。この中で、経済活動の中心となるのが1564歳の生産年齢人口です。14歳以下の年少人口は経済活動には寄与せず、また、65歳以上の老年人口も経済活動への寄与は小さいと言えます。

図表1-10 日本の人口動態(年齢3区分)

政府統計総合窓口 e-Statを利用して作成

この年齢3区分の人口動態を図表113のグラフに示しています。少子高齢化を話題にする時には年少人口(014歳)と65歳以上の老年人口を見ますが、国の経済に大きく関わるのは生産年齢人口(1564歳)です。

 この生産年齢人口は、今から約25年前の1995年(平成7年)に8,103万人となり、そのピークを迎えています。この時の生産年齢人口は、第二次世界大戦後の1945年(昭和20年)の約2倍です。この急激な人口増加が、これまでの経済成長を支えてきたとも言われています。その後、この生産年齢人口は減少に転じ、2020年(令和2年)には7,405万人になっています。これは、ピーク時(1995年)から約10%の減です。また、約30年先の2050年には4,529万人になると推計されており、ピーク時の約60%となります。これは、第二次世界大戦終了時の1945年(昭和20年)とほぼ同じです。将来は、この年々少なくなる生産年齢人口で経済を支えていくことになります。ここには大きな課題があります。

 このように総人口の減少はさほど大きくないのですが、経済活動に寄与する生産年齢人口は大きく減少しています。この結果が、現在の労働力不足を生み出しており、この状態は今後更に厳しくなると言えます。

 この生産年齢人口の減少は、首都圏等の大都市圏ではさほど顕著ではありませんが、地方都市での減少は深刻な状況にあると言えます。図表114はこの状況を表しています。大都市圏の都市として東京都府中市、そして、地方都市として山口県周南市を取り上げます。

図表1-11 2つの都市の人口動態(年齢3区分)

両市の人口ビジョン等の資料より作成

(縦軸の単位は万人)

 府中市の生産年齢人口は2010年にピークを迎えていますが、それ以降も殆ど減少がありません。一方、周南市ではピーク時に比べて約31%減少しています。このように、首都圏や大都市圏の都市では生産年齢人口の減少はさほどでもないのですが、地方都市では大きく減少していることが見て取れます。ここに地方の衰退の姿を垣間見ることができます。

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