<【グローバル人材】ってどんな人材?> 鈴木洋三
最近は新聞紙上でもTVでも"グローバル人材"と云う言葉が踊りまくっている。ではいつ頃から"グローバル人材"と云う言葉がはやり出したのか、また、どんな人材を"グローバル人材"と云うのか、無い知恵を絞って考えて見たい。
"グローバル人材"と云う言葉の前に"グローバル・スタンダード"と云う言葉が1990年後半から、日本のバブル経済が崩壊した後の小泉内閣の頃に流行ったのを皆さまも思い出すのでは無いだろうか。
どうも日本人は"グローバル"と云う言葉を日本経済の再生のキーワードにしたくてしようがないのでは・・、とも思えて来る。
そんな折、昨年12月9日、経済産業省主催の『企業が求めるグローバル人材-その活用と課題に迫る-』と云うシンポジウムを聴きに行った。
基調講演に立った三菱商事の小島順彦会長は日本の若きビジネスマンに期待する事として以下の3点を挙げていた。(私流の言葉に意訳している所もあるかも知れないが)
1;自己表現力のある人・・特にDebate能力、Facilitate能力。
2;英語力とは・・流暢な英語を話せる事では無い。自分の意見を理解してもらえる事だ。
3;外の国が日本をどう観ているかを知る。国際社会に於いては国際貢献の志を持つ。
誠に基調講演に相応しく、日本の若きビジネスマンが世界の市場で活躍する際に意識して身に付けねばならないこと、陥りやすい弱点、心構えを述べられていた。
その後、企業が求めるグローバル人材と云うテーマで中小企業、大企業、流通業から3名のパネリストが選ばれ日経新聞編集委員の後藤康浩氏のコーディネトによるパネルディスカッションが行われた。この中で3人のパネリストの皆さんが言われた事を筆者流にまとめて見ると以下の7点に集約できた。
1;コミュニケーション能力がある・・自分の考えを持っている。相手の目線に立てる(高い目線は論外)。コミュニティーの中に入れる。
2;バイタリティーが在る・・粘り、打たれ強い。
3;体力がある。・・何でも食べられる、現地の人の中に入れる。
4;知識を持っている(幅広い常識)。
5;専門能力が高い(出来る人材である)
6;情熱(パッション)がある。
7;挑戦意欲がある(修羅場の経験)。
3人の方々の意見をまとめて見ると、企業が求めているグローバル人材像とは特別なモノではなく、バブル経済崩壊前から求められていたビジネスマン像と基本的に変わらない事がわかる。
最近日本人の海外留学生の激減(絶対数で日本の1/3強の人口の韓国よりも少ない)を心配する人が多い。事実、国が豊かになると共にハングリー精神も薄れ、大志を抱く若者も少なく成って来た事で、韓国とは対照的に映るが、このシンポジウムで海外青年協力隊のうれしい話も聴かせて貰えた。‘70年代は数百名足らずだった派遣者が、その後、ほぼ毎年増加し、最近は1500人を超える規模になって来ている'との事である。水も無い、電気も無い、そんなところにボランティアを自ら志願し、その国の人々の役に立ちたいと思う志と、実行力、そして現地での対応力には正に頭が下がる思いだ。
多少横道に逸れてしまったが、"グローバル人材"とは特別な人材では無く、我々ビジネスマンが誰でも共通に目指すべき人材像である事をご理解頂きたい。内向き、下向きの思考からは改善は生まれない。
日本のビジネスマンが相手を思いやる、相手の立場に立って考えるコミュニケーションを身に付け、幸せな家庭をベースに職場の活性化を図り、仕事の幅、深さを広げる為にも知識を吸収してコミュニケーションの厚みを増し、外に向かっては異なった価値観、異なった文化を理解する知識を広め、更にコミュニケーションの幅を広めて行き、前述した三菱商事の小島氏の言われる"自分の意見を持ち"、それを相手に理解して貰えるだけのコミュニケーション力を身に付けたいものである。この程度のコミュニケーション力が身につけば、自ずから小島氏の言う日本を外から見る事が出来る可能性が出て来るのでは・・・。
最後は筆者の持論の"Nice_Communicatorたれ"に強引に持って来てしまった感もあるが、今年こそ失われた20年に決別し、元気な日本の再生元年にしたいモノです。
皆さまのご健勝を心よりお祈りしております。