<商品開発スピードと競争力>  馬渡 惇

 商品開発と商品を市場に出すタイミングについて、前号のメールマガジンでも述べてあるが、その判断には非常に難しいところがある。

 研究開発から始まる商品開発は、数年又はそれ以上時間が掛る場合が有るが、その技術の完成度と上市時期の判断は非常に難しい。技術者は初期の目標(他社を凌駕する性能、時期、コスト等)に向かって開発するが、初期に立てた時期に間に合わない事が多々ある。そこには、
  1.性能が不十分
  2.コストが高い
  3.他社に出し抜かれた
  4.マーケットニーズの変化
等、原因は色々あるが、ここで重要な事はスピード感だと思う。性能が不十分な場合はどの位の性能まで来ているか、もちろん致命的な性能の欠如(市場不良等)はいけないが、その時のマーケトニーズから見て、商品価値が有り上市する事が可能か?・・・である。当然、ユーザに不利益な、いい加減なものを上市するという事では無い。

 技術開発で難しいのは完成度が90%位まで出来ていた場合、更に95%、100%にする為の時間と費用が想像以上に掛る場合が多いことだ。技術志向が強すぎると、「あと一歩でもっと良いものが出来るはず」という思いに囚われる。しかし、技術開発の完成度と商品価値の見極めについて、経営的なマネジメントが重要である。完璧を求めるが為に多くの時間と多くの経費を消耗し商機を失っているのではないか。 良く言われる走りながら考える事も必要ではないだろうか?

 1970年代、80年代は日本の商品は、性能、品質、価格で日本人が今まで培ってきた高い完成度を求める習性とそれをやり抜く技術力が功を奏して発展してきたと思う。しかし、アナログからデジタル化によって、日本メーカーが長年にわたって蓄積してきた開発成果のブラックボックスが存在しなくなったのに加え、さらにコンピュターの発達、インターネット等により世界が狭くなり、商品価値として時間の要素が過半を占めるようになった。しかも、現在の商品価値は価格優先で、使える品質、性能はほぼ同等の商品が売れ筋だ。コンシューマ系の電子機器産業で勝ち組の韓国、台湾、今からの伸びてくる中国の経営判断のスピードには目を見張るものがある。

 多くの新技術の商品化に実際に取り組んできた長年の経験から言わせてもらうと、これからの製造業にとっては、
   差別化された強いコアー技術とやる気を持ち、
   時間の価値観を入れた経営行動に努めること
が極めて重要になる。