<東京ビッグサイト開催の二次電池展をのぞいてみて> 余田幸雄
3月1日に国際二次電池展が開催されていたので顔を出してみた。以下、中国BYD社のリン酸鉄リチウム電池製品(Emergency_Energy_System-1500)に関連しての感想である。
BYD社のブースに、他のブースと異なる驚きを感じたのである。それは彼らの住宅室内の設置を前提とした製品のコンセプト作りである。スリムで室内の空きスペースにウマク嵌る幅/奥行き/高さ。色は家具と調和するツートンカラー(白と茶色と記憶)。パンフ等によると性能は悪くはなく(たぶんいい方だと思う。)家電量販店で販売される価格設定。そう重くもなく室内の移動も可能、等々。
知り合いが作ってくれた国内メーカー二次電池製品リスト表に50近い製品があり、そのうちリチウムでBYD社と同じくコンパクトさを意識しているものが10、うち大手が2つ、後はベンチャー企業と見られる。この大手2社の出展はなく、ベンチャー数社が出展していたがBYD社ほどは垢抜けた仕上りとはなっていなかった。もちろんEV用のリチウムイオンで期待されている著名大手数社も出展していたが、要素部品としての出展で、一つのコンセプトに纏めあげての出展ではないように思われた。
この辺りから本論に入るが、我が国大手の電子・電気機器産業について現在言われている課題がここにもあると会場を歩きながら感じたのである。グローバル競争の中でコンセプトとして纏め上げていく割切り感とスピード感、日本メーカーがこだわったデザイン・センス、価格/デザイン/性能等が完璧でないとしても国際的な場に打って出る韓国ベンチャーや国内ベンチャーとの温度差、プラットフォーム戦略や標準化戦略が声高に叫ばれている中での技術/特許の重視、などである。
もちろん、EV用として最先端を走っているゆえにうっかり情報を開示できない、自動車メーカーともコンソーシアムを組んでいるので身動きが取りにくい、原子力中心でやってきた日本にとってメイン市場は家庭/オフィス用ではなくEV用であった、などの事情は分かるが、本丸と思い込んでEV用で先頭を走っている間に、非EV用途の標準やプラットフォーム作りは中国/韓国勢に先行され、EV用もその勢いで囲い込まれるのではなかろうか、などと連想を膨らませて会場を後にした。
後日、当社のスタッフからこれに関連して二つ指摘があった。一つは、その友人のベンチャー企業は日本大手から消費者向け製品の部品として供給を受けられず、BYD社から少量を試作用に提供を受け量産用も少量ロットで供給を受けているというものである。もう一つは、従来型コンセプトや日本人好みに引っ張られて新コンセプトで製品化する力が弱くなっている証拠は、アイロボット社の掃除機ロボット「ルンバ」やダイソン社のサイクロン掃除機の我が国での成功を見ればよいというものである。
どうも最先端を狙うために逆に臆病になりすぎ、割切りができず身動きが取れなくなり、世界の味方作りもうまく行っていないのが我が国の製造業の姿ではないかと、あれ以降思ってしまうのであるが、これが妄想であることを切に願い、果敢にチャレンジされる企業とSOLEが一緒に仕事できる機会が生まれることを願い、読んで頂いた皆様のご健勝を願って、終わりにしたい。