<IT化社会を見て> 村島一彌
筆者は1942年生まれです。世の中が情報化社会に移行し発展を続ける最も変化の激しい時期に、IT(情報技術)の分野で社会人としての時間の大半を費やしてきました。
情報革命は約30年前に始まったと言われていますが、その頃にアップルコンピューター、オラクルシステムズの前身であるSDL、サンマイクロシステム、シスコシステムズ、マイクロソフトなどが設立されています。
革命と云うからには、ITにより産業構造が大きく変化し、その影響を受けて市民生活や社会に大きな変革が起きることを意味しますが、筆者は、情報革命の根本的な要因は、ノイマン型コンピュータ(ストアドプログラム逐次処理方式)がソフトウェアをハードウェアから切り離して独立させたことにあり、これによってハードとソフトがそれぞれ独自に発展することが可能となり、ITの急速な進化・普及が進んだからだと思っています。
情報革命から約10年経った頃から、ユビキタスと云う言葉が使われるようになりました。世の中のあらゆるモノにコンピュータやICチップが埋め込まれ、情報システムとインターフェイスできる環境ができあがり、誰もが、何時でも、何処ででも情報取得や遠隔操作などができる便利な(ユビキタス)社会に向かうと云われたのです。現在のスマートフォンやタブレット端末の使われ方は、20年前に期待されたユビキタス社会が将に実現し、更に進化している証拠と言えましょう。
*今や知識のみならず思考の方法までがスマホから得られ、端末からできないものはない?そのお蔭で老人の知恵、知識経験の価値は顧みられなくなった!
*今やクラウドコンピューティングの活用で小規模企業でも大企業と同等のシステムリソースが使えビッグデータの分析を行うことも可能だ!片やピラミッド型の大規模組織はグローバルビジネスの桎梏となっている?
*今やWeb経由であれば世界の何処とも原則無料で繋がり、世界はフラットに地球は眠らぬこととなって、世界大競争時代となった!!その結果、我が国の企業はグローバル化競争の中でビジネスモデルを変えざるを得なくなって悪戦苦闘している!!!
以上はIT化社会のほんの一面ですが、自らの経験への身びいきを割り引いても、猛烈なスピードで社会生活、構造、思考に影響を与える変革をリードし、今後もリードしていくのはソフトウェアだと思います。
しかしながら、海外ではソフトウェアが情報化社会の中核にあるものとして高く評価されているのに対し、我が国では低く見られていることが気になります。ソフト開発部門や技術者への評価が低く開発は業者へ外注すればよい、人財育成がおろそかで世界に通用するIT技術者がいない、大企業にはソフトウェアに造詣の深いIT(化推進)担当役員が少ない、IT担当役員はITシステムだけを見ていればよい、、、等々よく耳にしてきたことです。
我が国産業にとっての課題は、ITを、業務効率化、生産性向上、コスト削減等の側面のみから利用するのではなく、製品の機能性能のブレークスルー、顧客満足度の向上、画期的サービスの創出などを目指して戦略的に活用することです。そしてこれらを実現するのはソフトウェアにあることを再認識して、戦後の産業の復興発展、情報革命、現在を見直し、次の10年、20年の我々の生活、産業などの在り方を考えて頂ければ幸いです。